【キャッシュレスのメリットとデメリット】キャッシュレス社会は日本に浸透するのか

【キャッシュレスのメリットとデメリット】キャッシュレス社会は日本に浸透するのか

2018年は経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、「『日本再興戦略』改訂2014」でも掲げられていたキャッシュレス決済の普及が、日本でも本格的に始動しました。

2019年10月の消費税増税と同時に、キャッシュレス決済での購入金額の2%ポイント還元するという政策が検討されるなど、キャッシュレス決済比率2割程度にとどまる「キャッシュレス後進国」日本でも、キャッシュレス化の動きはどんどん加速してきています。

さらには、政府だけではなく民間企業もキャッシュレス化に対し様々なキャンペーンや広告を打ち出し動きを活発にしております。

また世界各国では「高額紙幣廃止」が検討されており、実現すると資産を現金で保有する人が減少する事が考えられます。2018年に話題になった仮想通貨なども含め、形のない貨幣でのやりとりが今後は活発になると考えられており、現金でのやり取りは40年後にはなくなるとも言われています

世界中で少しずつ浸透している「キャッシュレス社会」ですが、日本での普及は可能なのでしょうか。また、どれだけの人が「キャッシュレス」について正しく理解し、人生の味方につけることができるのでしょうか。「キャシュレス化」のメリットとデメリットと併せて見ていきましょう。

キャッシュレス化に対する「期待」と「不安」

2018年末に「PayPay」が話題となり、今やテレビや新聞などのメディアで「キャッシュレス」というワードを見ない日はないほどです。キャッシュレス市場は賑わっており、QRコード決済が普及したり、スマホを使ったデビットカードが生まれるなど、すでに新しい経済圏を生み出し期待を集めている。

かたや、急速に進むキャッシュレス化を巡っては、「使いこなすことができるのか」「現金大国の日本で普及するのか」と不安視する声があるのも事実です。

キャッシュレス化のデメリット!利用者の最大の問題点は「バッテリー」

決済手段が多く、どれを使えばいいかわからない

クレジットカードや電子マネー・モバイル決済アプリなどが乱立しており、どれを使うべきかわからない。また、利用可能店舗がバラバラで、中には利用できない店舗もある。

・バッテリーがないと利用できない。

日々直面しているバッテリー問題が大きくなる。震災などでシステムダウンした時は利用できず、結局現金が必要になる。

・浪費しそう

お金を使っている感覚がない。また、管理が難しく消費金額が多くなる。

・セキュリティに不安

暗証番号や個人情報が流出して犯罪が起きる。システムの脆弱性によって不正が行われる可能性がある。

・現金主義。ご祝儀やお年玉などの現金文化では使えない

日本には昔からの現金文化が根強くある。その時には現金が必要になる。ご祝儀やお年玉をキャッシュレスであげるのには抵抗がある。

・自己決定権、知られない権利を侵害される

データが収集され利活用されることによって、自己決定権や知られない権利を侵害される。購買履歴など個人のデータが、第三者に利用され気づかないうちに購買行動を第三者にコントロールされてしまう。知られたくない情報が第三者に知られる。

なぜ日本社会ではキャッシュレス化が浸透しないのか

利用者にとっても、実店舗にとってもデメリットが存在しているが、社会情勢の観点から日本社会でキャッシュレス決済が浸透しない背景を見て行きましょう。

①治安の良さ

盗難など犯罪の少なく、現金を落としても返ってくると言われるほど治安が良い。

②圧倒的な現金に対する高い信頼

偽札の流通が少なく、紙幣が綺麗。

③ 現金取り扱いが煩雑でない

店舗のPOS(レジ)の処理が高速で正確。

④現金の入手が容易

ATMの利便性が高い。

これらの要因によって日本では「現金流通高(預金等ではなく、実際に世の中に出回っている現金の量)」が他国と比較してかなり高いです。日本は、現金大国と言えます。

世界各国のキャッシュレス化

世界各国のキャッシュレス決済比率を見ると、韓国では89.1%に達するなど、キャッシュレス化が進展している国では軒並み40〜60%台に到達しています。

そんな中、日本は18.4%にとどまるのが現状です。

ちなみに日本の総人口の一人当たり7.7枚のカードを保有しています。そのことから、日本人は世界的に見ても現金以外の支払い手段を多種多数持っていることがわかります。

【韓国】国家施策でキャッシュレス化を進める

韓国におけるキャッシュレス化は、1997年の東南アジア通貨危機の打開策として「実店舗の脱税防止」や「消費活性化」を目的に、政府主導の「クレジットカード利用促進策」を実施してきました。

・年間クレジットカードの利用額の20%所得控除

・宝くじ参加権利の付与

・店舗でのクレジットカード取り扱い義務付け

また、硬貨の発行、流通、管理の社会的コストがかかることから、2017年から「コインレス」に向けて「パイロットプログラム」を始動させています。このプログラムは、消費者が現金で買い物をした時のお釣りを直接その人のプリペイドカードに入金し、釣り銭が出ないようにする取り組みです。

【中国】支払いサービスの普及によりキャッシュレス化を急速に進める

中国では現金の安全性(偽札問題)、透明性(脱税問題)、コスト(印刷・流通コスト)における課題が存在していました。

2000年以降のインターネットを活用した、従来型とは異なる新しい仕組みの誕生させ、さらにはキャッシュレスを可能にする消費者の生活に深く浸透した「生活アプリ」の誕生がキャッシュレスを後押しした要因と考えられています。

【スウェーデン】あらゆる方法でキャッシュレス化を進める

1990年代始めに陥った金融危機により、金融機関を中心に国家をあげて生産性向上を目指しました。また、冬季期間の現金輸送の困難さや、慢性な人手不足になっていることから現金を取り扱う金融機関や交通機関等での強盗事件が起きたことへの対策としてキャッシュレスが推進されてきた背景があります。

・モバイル決済アプリ「Swish」の普及

スウェーデン主要6銀行が共同開発した決算システム。2012年のサービス開始から国民の半数以上が利用している。

・犯罪対策による現金取り扱いの廃止

交通公共機関での現金取り扱いをやめ、電子マネーを中心としたキャッシュレス支払いのみを受け付けている。

金融機関でも現金を取り扱わない店舗を導入するなどしており、2010年から2012年にかけて900代のATMが撤去された。

・実店舗における「現金拒否」

実店舗では「CASH FREE(現金拒否)」と事前に意思表示することにより、支払いにおける現金の受取りを拒否する店舗が存在している。

キャッシュレス化のメリット

キャッシュレスの仕組みにおけるデメリットと、日本の現金大国という面からもキャッシュレスの普及が難しいと考えられています。しかし、利用者が感じるキャッシュレス化のメリットも多くあります。

・現金を持ち歩く必要がなくなる

不潔なので持ち歩きたくない。財布が軽くなる。現金を落とす不安がなくなる。

・利便性が高い

交通系電子マネーですでに恩恵を受けている。口座から現金を下ろしたり、送金に手間がかからない。

・やりとりがスムーズ

レジで時間が短縮される。通販などで振り込みや代引きの手間がなくなる。

・決済する度にポイントが貯まる

ポイントが貯まり、現金のように手数料を取られない。

・お金の管理が楽になった

いつ何にお金を使ったか、WEB上で管理できる。履歴の閲覧や見直しができる。

・老眼で小銭が見にくいということがなくなった

なぜ日本にキャッシュレス化が必要なのか

現金の信用も高く、昔からの現金文化が根強い日本においてなぜキャッシュレス化が必要なのでしょうか。また、キャッシュレス化が進む各国のように日本にキャッシュレス社会をもたらす動機は何なのでしょうか。

1番の動機となり得るのは「国の生産性向上」です。

少子高齢化や人口減少による労働人口の減少時代を迎える日本においては、国の生産性向上は大きな課題のひとつになっています。

その中で、キャッシュレス社会がもたらす効果は

①実店舗の無人化や省力化

②不透明な現金資産の見える化

③流動性向上と不透明な現金流通の抑止による税収向上

④支払いデータの利活用による消費の利便性向上や消費の活性化

これら4点が日本のキャッシュレス社会にもたらす効果と言えるでしょう。

まとめ

慢性的な人手不足による強盗増加が問題になったスウェーデンや偽札が多く流出し現金の安全性にリスクがある中国など、キャッシュレス化が進む各国では、キャッシュレス社会になる理由や動機がしっかりとある。

日本では現金に対する信頼がかなり高いです。そんな中で、キャッシュレス化が進む理由を広め、利用したくなるような付加価値が付く事が「現金大国」日本をキャッシュレス社会に変える要因になってくるのではないでしょうか。

日本政府は2025年に開催予定の大阪・関西万博に向けて、キャッシュレス決済比率を現在の2倍まで高めていき、将来的には世界水準の80%を目指すと鼻息が荒いが、日本の文化や国民の実情にあったキャッシュレス化を進めていくことが重要になってくると考えます。