キャッシュレス社会は「思いが軸」の社会

キャッシュレス社会は「思いが軸」の社会

2019年1月13日(日)に開催された【お金の教養フェスティバル2019】に参加しました。

話を聞いて感じたことをまとめました。

テーマと全体の流れ

今回の「お金の教養フェスティバル 2019」は「キャッシュレス社会に考えたいお金の事」というサブタイトルが付いていました。

「キャッシュレス社会」と聞いて、どんな社会を想像しますか。

自分は昨年12月に話題になった「PayPay」などのモバイル型キャッシュレス決済が現金決済よりも普及している社会だと考えていました。事前に下調べもしていたので「現金文化が根強い現金大国の日本にキャッシュレス社会は来るのかどうか」という視点で第4部まであるフェスティバルに参加したのですが、第一部でその考えを根本から打ち砕かれました。

第一部は、SHOWROOM代表の前田裕二さんと「Forbes Japan」副編集長の谷本有香さんが、「共感とお金」の関係性について講演されました。自分が重要だと思ったポイントは4つです。講演の流れはこの4つのポイントで話が展開されていきました。

①前田さんの自己紹介と「SHOWROOM」について

②「SHOWROOM」は共感が可視化できるサービス

③価値主義・評価経済社会は「思い」が軸の社会

④これから重要なのは「思い持ち」

ポイントを見ても分かる通り「キャッシュレス」については語られていません。しかし、自分は最後まで話を聞いて「これがキャッシュレス社会か」と腑に落ちました。

前田さんが考えるキャッシュレス社会とは「思いが軸の社会」です。

①前田さんの自己紹介と「SHOWROOM」について

まずはじめに語られたのは前田さんの人生のテーマについてと、自身が立ち上げたSHOWROOMというサービスが生まれるきっかけになった経験についてです。

前田裕二の人生のテーマ

幼少期すごく貧乏だったという前田さんは、人生のテーマのひとつにお金があります。お金がとにかく怖く、お金で幸福をコントロールされるのが恐怖だった事もあり、逆にお金をコントロールしてやろうと思っていたそうです。

大学生の時はファイナンシャルプランナーの勉強をしたり、UBS証券会社に勤めていた時にはお金を扱ったり、年収の目標を決めていたりしていたのですが、目標を達成する前にお金の恐怖を乗り越えました。それと同時にお金が増えても、幸福度は変わらない事に気づいたそうです。

SHOWROOMの元になった経験

小学生の時に親を亡くしてから、お金がない状況だったという前田さんは「路上ライブ」をして生活をしていました。はじめてから半年くらいはほとんどお金をもらえなかったのですが「共感を得るライブ」をするようになると少しずつお金を置いてもらえるようになったそうです。

「共感を得るライブ」とは「この子好きだな」「この子応援したいな」「この子の人生の一部になりたいな」と聴衆に思ってもらうライブです。共感するという気持ちが生まれた時に人はお金をくれるそうです。

「人はどういう時にお金をくれるのか」という問いに「共感した時」という答えを導き出した小学生の路上ライブは月に15万円ももらえるようになりました。この経験がSHOWROOMの元になっています。

「SHOWROOM」は共感が可視化できるサービス

「SHOWROOM」はタレントやアイドル等の配信が無料で視聴でき、さらに誰でもすぐに生配信が可能な、双方向コミュニケーションの仮想ライブ空間です。

配信者は自分をアピールして視聴者からヴァーチャルギフトという、投げ銭を受け取ることができます。路上ライブでギターケースに聴衆がお金を入れるように、ネット上で配信者に視聴者がヴァーチャルギフトをあげる。「SHOWROOM」はこのヴァーチャルギフトという仕組みで「共感」という思いを可視化したサービスです。

SHOWROOMのように共感などの「思いがお金に変わる仕組み」はどんどんできてきます。その理由を2つあげられていました。

1.利他的行動が可視化でき、世界に広がる

利他的行動とは「自分の不利益をかえりみる事なく、他人の利益をもたらす行動」です。

ここで例に挙げられたのは、古代中国の井戸の話でした。井戸に落っこちそうな子供を見た時に、誰しもが驚き慌てて利害関係なく救いに駆け出すという話です。まさに利他的な行動なのですがこれは古代中国の話で可視化される事はなく、広まっても村のコミュニティのみです。

今はメディアで利他的行動は可視化できます。マークザッカーバーグが資産の99%を寄付するといえば世界中に拡散されました。

2.社会が一定の成熟度に達している

今の社会は一定の成熟度に達しています。それと同時に「乾けない世代」が増えています。

「乾けない世代」とは、サイゼリアの300円のワインで満たされたり、いい車に乗る事をステータスにしなかったり、家も持ち家ではなくシェアする。つまり「お金を持っていなくても満たされている世代」の事をさします。

そういう世代を駆り立たせるのが、「この子好きだな」「この子応援したいな」「この子の人生の一部になりたいな」という共感などの「思い」です。

「共感・信用・評価」をお金に変えるサービスがたくさんある

「思いがお金に変わる仕組み」ができてくる理由は上記の2つです。現在、SHOWROOMの他にも共感以外の「信用・評価」という「思い」をお金に変える仕組みはたくさんあります。

・ポルカ「フレンドファンディング」

・クラウドファンディング

・Instagram

これらのサービスが一般化すると将来、価値主義・評価経済社会がやってくると言われています。

③価値主義・評価経済社会は「思い」が軸の社会

利他的な行動が瞬時に可視化され「思いがお金に変わる」と、資本主義から価値主義・評価経済社会に変わっていきます。なぜなら、社会の軸が「お金」から「思い」に変わるからです。

価値主義・評価経済社会とは

資本主義の社会は「お金」が社会の軸になっていて、労働者と資本家の関係が成立する社会です。

価値主義・評価経済社会は「信用」が社会の軸になっています。具体的にどんな社会か。前田さんはタクシーの例を出していました。

例えば、タクシー運転手の山田さんにこう言います。

「山田さん。これからは評価経済社会です。ここから自宅までタダで乗っけてください。その代わりにSNSで山田さんの事を紹介します。

すると、信用が貯まっていって、いろんな人が山田さんのタクシーに乗りたいと思うでしょう。今ここで乗車料金をとってもいいのですが、それでは資本主義の奴隷のままですよ。

価値主義・評価経済のスキームでは長期的に得しますよ。」

これが成立するのが、価値主義・評価経済の社会です。

現代で「信用をお金に変える」未来人

この後に紹介されたのが、「ホームレス小谷」さんです。今の資本主義の社会で、信用をお金に変える価値主義・評価経済社会の生活をしている本物のホームレスだそうです。

ホームレス小谷さんがやっているのが「50円で自分の1日を売る」という事です。この話を聞くと、大人が1日働けば1万円稼げるのに「50円で1日を売るなんて」という考え方が資本主義の考え方なんだなと実感しました。

ホームレス小谷さんは50円で草刈りやペンキを塗るなどなんでもやります。前田さんも甥っ子の宿題を50円で手伝ってもらったそうです。どのように生活しているのでしょうか。

例えば、50円で草刈りを引き受けます。朝から大の大人が50円で草刈りを一生懸命していると、依頼者は50円でこんなにやってくれているのだから「お昼ご飯どう?」と声をかけます。

そこで少し仲良くなり、昼からも一生懸命草刈りします。夜になり、全て草刈りが終わると「本当にありがとう。夕食もどう。」と誘われるようになります。

2度も食事をするとさらに仲良くなり、「飲みに行こうよ」と誘われます。そして夜遅くなると、しましには「今日、泊まっていけば」と言われるようになります。

大人が1日働けば1万円稼ぐ事ができる中9950円を放棄し、「信用」を貯める事で生活しているのです。

ホームレス小谷さんがクラウドファンディングを始めるとすでに「信用」が貯まっているので、お金が一気に集まってきます。

④これから重要なのは「思い持ち」

会社に勤めている人は信用を貯めてもすぐにはお金に変えることができません。会社の中で信用を貯めても固定給は決まっているからです。じゃあ会社をすぐに辞めてしまえばいい、という訳でもありません。

どうすれば良いか。

信用を増やす重要な視点

これについては2つの視点を持つ事が重要だそうです。

1会社に所属する「自分」

2個としての「自分」

会社の仕事も一生懸命やります。個としての自分ではしっかりと自分を売り出していきましょう。ここで例に出していたのは、SNSをしっかりとやるという事です。自分の本当に好きな事や、やっている事、考え方などをしっかりと発信していきます。会社に所属する自分の割合を減らし、個としての自分の割合を少しずつ増やしていくバランスが重要です。

信用を得るためにやる事

ホームレス小谷さんの利他的な行動の根本には「与えることから始める」という考え方があります。この考えを元に行動すると「信用を得る」に繋がるそうです。

でも利他的な行動で人から信用を得ようとするとあざといと思われる事があります。また、自分が満たされていないのに、人を満たす事はできません。

では、利他的な行動以外で信用を得るにはどうしたら良いのでしょうか。この問いには「本当に好きな事をやる」と答えていました。

自分が本当に好きじゃない事をやっていると必ずどこかでボロが出てしまいます。そのボロが嘘になり信用を失ってしまいます。自分が本当に好きな事には嘘がありません。本当に好きな事をやって自分が満たされれば、人にも満たすことができます。

本当に好きな事の見つけ方

本当に好きな事がまだ見つかっていない人はどうしたら良いのでしょうか。ここではこの2つの方法を紹介していました。

①これまでの人生で琴線が触れたものを見つける

自分のこれまでの経験を振り返り、本当に好きだと思った経験がないか内省し分析していきます。例えば、お遊戯会で主役をやった。という経験が本当に好きだったとします。では、その時の何が好きだったのか。という事をさらに分析していきます。

「演技した後に拍手をもらって評価してもらえた事が好きだと思った」のか「舞台で演じて自己表現をした事が好きだと思った」のか「周りの人をひとつの舞台を完成された達成感が好きだと思った」のか。このように内省していくと、本当に好きな事が見えてきます。

②経験の幅を広げる

まず、自分が経験したこと以外は本当に好きだとは言えません。経験してない事は、知らないからです。これは、タコワサ理論で例えることができます。

「もし地球が明日なくなるとしたら最後に何を食べたいか。」と小学生に質問した時に

「ハンバーグ」や「カレー」と答える事はあっても、「タコワサ」と答える事はほとんどないでしょう。なぜなら、ほとんどの小学生はタコワサを食べたことがないからです。

このように経験したことない事は、好きな事の選択肢には絶対にならないのです。本当に好きだと思えることがない場合は、経験の幅を広げてみましょう。視野を広げ、いろんな人に会い、いろんな価値観に触れると本当にやりたい事が見つかるはずです。

「お金持ち」から「思い持ち」へ

最後にキャッシュレス社会ではお金がさほど重要ではなくなってくるそうです。この人応援したいと思えば、スマホひとつで即・スムーズにお金が送れるのがキャッシュレス社会です。「思い」がお金に乗りやすくなると「お金」よりも「思い」の方が重要になってくるそうです。

その為、これからの資産運用では「時間」も重要なアセットになります。何に時間を割くのか、自分の時間をどのように運用するのかによって、思いを貯めることができます。お金持ちを目指すのではなく思いを多く持つ「思い持ち」を目指す事を勧めていました。

現金決済よりもキャッシュレス決済の方が利用されている社会をキャッシュレス社会だと思っていました。しかし本当の意味での「キャッシュレス」な社会を言っていたんだなと、ここで気づきました。

【感想】わくわくする社会

話を聞いて単純に「価値主義・評価経済社会」は生きていて毎日がわくわくする社会なんだろうなと感じました。本当に好きな事を発信していき、いろんな人から評価を得るのはどんな評価がもらえるのか毎日わくわくするんだろうなと思いました。

SNSをほとんど更新してない自分も少しずつ始めて行く気になりました。しかし、一度信用を失うと生きづらい社会なんだろうなとも感じました。

この話を聞いてみて「価値主義・評価経済社会」の波は少しずつ寄せていると感じたのは「思いがお金に変わる」というところです。

話の中では「信用がお金に変わる」と言っていたのですが、信用以外にも共感や評価、価値などもお金に変わるとおっしゃていたので、全てまとめて「思い」としました。

自分思った「思いがお金に変わる」いい例は「Instagram」です。インスタグラマーという多数のフォロワーがいて影響力がある人は自分の影響力を使ってお金に変えることができます。

実際に「最初、子供が好きで写真をとっては投稿していました。するとだんだんフォロワーが増えて、子供服のメーカーから広告の依頼がきたんです。」という例もあります。本当に好きな事をやっていると、思いがお金になった例ではないでしょうか。

Instagram自体には「思いをお金に変える」仕組みはありません。しかし「いいね・コメント・フォロワー」というのが「共感・信用・評価」につながってお金になっています。InstagramもSHOWROOM同様に思いを可視化できる仕組みになっていると考えました。

話の節々に出てくる興味深い話

前田さんの話にはいろんな例え話が出てきました。

①マズローの5段階欲求

小学生時代に路上ライブで「人はどういう時にお金をくれるか」を考えるようになったのは、もらえるお金が増えていき安全欲求という低層欲求が満たされたから、次の欲求にステップアップした。

②生物は遺伝子を未来に運ぶ個体

利他的な行動をする理由として、イギリスの進化生物学者「リチャード・ドーキンス」の学説で例えていました。

生物が未来へ遺伝子を運ぶ個体だとしたら、意図的に利他的な行動をとります。なぜなら利他的な行動は、より強い遺伝子と結びつき、結果未来に遺伝子を残すことができる。

③中国の井戸の話

井戸に落っこちそうな子供を見た時に、誰しもが驚き慌てて利害関係なく救いに駆け出す。というのは古代中国の性善説を唱える時に出てくる話です。

④乾けない世代

この言葉は尾原和啓の著書「モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 」で出てくる言葉です。この本では30歳以下の世代を「乾けない世代」と呼んでいます。生まれた頃から何もかもが揃っていたので、金や物や地位のために頑張ることができないのが「乾けない世代」という事です。

⑤マザーテレサの空のコップ

自分が満たされていないのに、人を満たす事はできません。まずは自分が本当に好きな事をしましょう。というところではマザーテレサの空のコップに例え、マザーテレサのように自分のコップが満たされてなくても人を満たせればいいんですけど。というように例えていたかと思ったのですが、ここは定かではありません。

マザーテレサの教えではコップを自分の心に例え、神の愛はいつでも降り注いでいるが、自分のコップが執着や虚栄心、物欲、権力欲、怒り、嫉妬などで一杯ならば、受け止める事ができないのでまずは余計なものを取り除く為コップを空にしよう。という事でした。

いろんな話をつなげて語ると説得力が増すし、興味を持って聞き続けることができました。

以前の記事では内容だけをまとめたのですが、今回は自分の考えを入れて記事にしました。前回書けなかった、最後の部分もかけて満足しています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。